カンタータ第12番 歌詞対訳・解説

BWV12 "Weinen, Klagen, Sorgen, Zagen" 「泣き、歎き、憂い、怯え」
初演:1714年4月22日
機会:復活節後第3日曜日
(英訳は右サイトのものを転用しました)http://emmanuelmusic.org/notes_translations/translations_cantata

このカンタータでは、ヴィオラⅠ・Ⅱが使われています。
第1曲:Sinfonia (Ob・弦楽合奏・通奏低音)
この曲の調性であるヘ短調は、強い悲嘆の表現としてバッハが好んだものだそうです。弦に伴奏されるオーボエの調べは、協奏曲を聴いているかのようです。

第2曲:合唱 (合唱(SATB)・弦楽合奏・通奏低音)
ミサ曲ロ短調の「Crucifixus」に転用された、有名な音楽です。半音階下降音形のオスティナートバスに基づくシャコンヌとして構築され、大胆な不協和音によって迫力のある苦悩が表現されています。中間部では、オーケストラが合唱パートをなぞる弦楽器のみとなり、テンポの早いモテット風の音楽となっています。
Weinen, Klagen,
Sorgen, Zagen,
Angst und Not
Sind der Christen Tränenbrot,
Die das Zeichen Jesu tragen.
Weeping, lamentation,
worry, despair,
anguish and trouble
are the Christian's bread of tears,
that bear the marks of Jesus.
泣き、嘆き、
憂い、怯え、
悩み、そして苦しみ、
それらはキリスト者の涙の糧である。
イエスの苦印を身に帯びた

第3曲:レチタティーヴォ (独唱(A)・弦楽合奏・通奏低音)
"Trübsal"「苦難」の語が4回繰り返され、神の国に入るための苦難が強調されています。"in der Reich Gottes eingehen"「神の御国に入る」の旋律は、一音ずつ連続的に上昇する音形で神の国に入るという象徴表現でもありますが、7小節間のVnの音形と共にコラール旋律を先取っています。
Wir müssen durch viel Trübsal
in das Reich Gottes eingehen.
We must enter the Kingdom of God
through much sorrow.
私たちが神の御国に入るには、
多くの苦難を経なければならない。

第4曲:アリア (A・Ob・通奏低音)
オーボエが2回の十字架音型を奏でると、アルトが「十字架と王冠は・・」と歌い出します。ダ・カーポの直前の小節では"Wunden"「傷」が歌われ、そこではアルトとオーボエが交互に十字架音型を奏でます。
Kreuz und Krone sind verbunden,
Kampf und Kleinod sind vereint.
Christen haben alle Stunden
Ihre Qual und ihren Feind,
Doch ihr Trost sind Christi Wunden.
Cross and crown are bound together,
struggle and reward are united.
Christians have at all times
their suffering and their enemy,
yet their comforts are Christ's wounds.
十字架と王冠はつながっており、
戦いと宝物は同じものである。
キリスト者はいつも
苦しみと敵を持っているものの、
彼らの慰めはキリストの傷である。

第5曲:アリア (B・Vn1,2・通奏低音)
気分が変わり、キリストに従う決意が喜ばしく歌われます。コラール旋律に基づく主題がカノン風に演奏されますが、これはキリストにつき従う様の象徴だそうです。
Ich folge Christo nach,
Von ihm will ich nicht lassen
Im Wohl und Ungemach,
Im Leben und Erblassen.
Ich küsse Christi Schmach,
Ich will sein Kreuz umfassen.
Ich folge Christo nach,
Von ihm will ich nicht lassen.
I follow after Christ,
I will not let go of Him
in prosperity and hardship,
in life and mortality.
I kiss Christ's shame,
I will embrace His cross.
I follow after Christ,
I will not let go of Him.
私はキリストにつき従い、
私はキリストから離れない
平安の時も苦しみの時も、
生きる時も死ぬ時も。
私はキリストが被った陵辱にキスし、
私は彼の十字架を抱きしめる。
私はキリストにつき従い、
私はキリストから離れない。

第6曲:アリア (T・Tp・通奏低音)
安定した8分音符で刻まれる通奏低音の上で、テノールが「忠実であれ」と歌います。その上でトランペットが、モテット3番で有名な「イエスよ我が喜び」のコラール旋律を歌っています。
Sei getreu, alle Pein
Wird doch nur ein Kleines sein.
Nach dem Regen
Blüht der Segen,
Alles Wetter geht vorbei.
Sei getreu, sei getreu!
Be faithful, all pain
will yet be only a little thing.
After the rain
blessing blossoms,
all storms pass away.
Be faithful, be faithful!
忠実であれ、すべての苦しみは
取るに足らぬことになる。
雨のあとには
祝福の花が咲き、
すべての嵐は過ぎ去る。
忠実であれ、忠実であれ!

第7曲:コラール(合唱(SATB)・Tp又はOb・弦楽合奏・通奏低音)
伏線として歌われてきたコラールが、最後にはっきりと姿を現します。合唱の4声部に加えて、トランペットとヴァイオリンⅠが第5声部を輝かしく歌います。
Was Gott tut, das ist wohlgetan,
Dabei will ich verbleiben.
Es mag mich auf die rauhe Bahn
Not, Tod und Elend treiben.
So wird Got mich
Ganz väterlich
In seinen Armen halten:
Drum laß ich ihn nur walten.
What God does, is well done,
I will cling to this.
Along the harsh path
trouble, death and misery may drive me.
Yet God will,
just like a father,
hold me in His arms:
therefore I let Him alone rule.
神がなされること、それは正しくなされる、
私はそれを堅くまもろう、
困難、死、悲惨が
私を追い立てても。
それでも神は私にとって、
父のような存在であり、
腕の中に抱きしめてくださるだろう、
だから私は彼の支配にのみ従う。